夏の空を仰ぐ花
「心臓が……持たないって……」


心配……してくれたのかな。


あたしのこと?


ドキドキしながら視線を携帯電話の画面に戻した。


自然に口元が緩む。


嬉しくて、なんだか楽しくて。


本当にここから飛び降りてやろうか、なんて思った。







――――――――――――――
あんまり危ないことすんなよ

また明日な

――――――――――――――


絵文字も顔文字も、読点も句読点も、記号も何もない。


殺風景で、一見、冷たくも見える文体とディスプレイ。


でも、あたしには宝石よりもキラキラ輝いて見えた。


嬉しくて、嬉しくて、どうしようもなかった。


「キャッホー! 世紀末ー!」


グラウンドに向かって真っ直ぐ、青空の下を颯爽と歩いて行くその後ろ姿に、叫ばずにはいられなかった。


「補欠ー! 部活さぼんなよーっ!」


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また明日な
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「さぼったら、ぶーっ殺すぞー!」


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また明日な
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補欠が振り向いて、目が合った。


あたしの心臓がジャンプする。


携帯電話を握り締めた左手をブンブン振ると、補欠は呆れたように笑った。


「はっ……補欠が笑った……」


眩しいのよ。


それ。


眩しい。



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