夏の空を仰ぐ花
「ああ、うん」
先生が聞いたというのは、結衣と明里とあっこのことか。
「親友なんだ。今日、野球の応援行くんだって。全校応援らしいよ」
「あ、そうか。南高校、決勝まで勝ち進んだんだってね」
すごいね、と先生が微笑む。
「たしか、君の彼氏はエースだったよね」
本当にすごいね、先生はぱあっと笑顔になった。
「うん、まあね」
でも、あたしは素直に喜ぶ事ができなかった。
正直、そこを褒められても何も嬉しくない。
自慢でも、なんでもない。
そのエースの彼女のくせに応援にすら行くことができないのだから。
だから、逆に惨めになった。
目を反らしてうつむいたあたしの肩を、先生が優しい手つきでさする。
「どうしたの? 嬉しくなさそうだね」
嬉しくない。
全然、これっぽっちも嬉しくない。
悔しくて、情けなくて、やるせなくて。
ただ、イライラが募る一方だ。
朝、3人が来て、帰ってからずっとイライラしていた。
「別に……」
「すごい事じゃないか。彼氏がエースで、今日勝てば甲子園に連れて行ってもらえるじゃないか」
ね、先生が言った瞬間、あたしはばっと顔を上げて、
「何が……何がすごいんだよ!」
睨みながら先生の白衣に掴みかかった。
「他人事だからそうやって笑ってられんだよ! 先生に何が分かんの!」
先生がぎょっとして、あたしを見ては固まった。
「南高が優勝したら、あたし、本当に甲子園に行けんの? それまでに退院できんのかよ!」
一度爆発してしまったものは、もう、どうにもならなかった。
後の祭りだった。
「もう最後なんだよ! 今年の夏が最後なの!」
補欠が南高のユニフォームを着て、エースナンバーを背負って、野球する姿を観ることができるのは。
この夏が最後だ。
先生が聞いたというのは、結衣と明里とあっこのことか。
「親友なんだ。今日、野球の応援行くんだって。全校応援らしいよ」
「あ、そうか。南高校、決勝まで勝ち進んだんだってね」
すごいね、と先生が微笑む。
「たしか、君の彼氏はエースだったよね」
本当にすごいね、先生はぱあっと笑顔になった。
「うん、まあね」
でも、あたしは素直に喜ぶ事ができなかった。
正直、そこを褒められても何も嬉しくない。
自慢でも、なんでもない。
そのエースの彼女のくせに応援にすら行くことができないのだから。
だから、逆に惨めになった。
目を反らしてうつむいたあたしの肩を、先生が優しい手つきでさする。
「どうしたの? 嬉しくなさそうだね」
嬉しくない。
全然、これっぽっちも嬉しくない。
悔しくて、情けなくて、やるせなくて。
ただ、イライラが募る一方だ。
朝、3人が来て、帰ってからずっとイライラしていた。
「別に……」
「すごい事じゃないか。彼氏がエースで、今日勝てば甲子園に連れて行ってもらえるじゃないか」
ね、先生が言った瞬間、あたしはばっと顔を上げて、
「何が……何がすごいんだよ!」
睨みながら先生の白衣に掴みかかった。
「他人事だからそうやって笑ってられんだよ! 先生に何が分かんの!」
先生がぎょっとして、あたしを見ては固まった。
「南高が優勝したら、あたし、本当に甲子園に行けんの? それまでに退院できんのかよ!」
一度爆発してしまったものは、もう、どうにもならなかった。
後の祭りだった。
「もう最後なんだよ! 今年の夏が最後なの!」
補欠が南高のユニフォームを着て、エースナンバーを背負って、野球する姿を観ることができるのは。
この夏が最後だ。