夏の空を仰ぐ花
良かったね。
本当に良かったね。
「幸せな親のとこに生まれてくるんだからさ。ハイパー幸せに決まってんじゃん!」
「翠ちゃん……」
泣き出した彼女の肩越しに、くすぐったそうに微笑む本間先輩が立っていた。
「翠ちゃん」
涼子さんが、あたしの手を握った。
その手のぬくもりは格別だった。
「先輩っ……涼子先輩!」
おめでとう、涼子先輩。
一度引けたはずの涙が再びあふれた瞬間、あたしの体は涼子先輩の腕の中にあった。
なんて細くて華奢で、頼りなさげな腕なんだろう。
「涼子先輩」
でも、なんておおらかで安心感のある細腕なんだろう。
「ミラクル元気な赤ちゃん産んでね……約束だかんね」
あたしは、細腕にしがみついて、泣いた。
もう、あたしたちに言葉は必要なかった。
なにせ、確かにあの補欠エースを奪い合った仲なのだ。
戦友にしか分からない何かが、あたしと涼子先輩の間に生まれていた。
「うん、約束ね。私、翠ちゃんみたいな女の子を産むの。この子、女の子なんだと思う」
そんな気がするの、そう言って、涼子先輩があたしの頬を撫でた。
「へっ? あたし?」
「そう。友達にはもちろん、先輩にも後輩にも、ライバルにさえ好かれる翠ちゃんにたいな子」
「……やめといた方がいいよ。あたし、先輩が思ってるような子じゃないからさ」
こんな跳ねっ返り、損するだけなのに。
ううん、と涼子先輩が首を振った。
「あたしみたいにだけは育てないでね。苦労するぞ」
へへ、と苦笑いしたあたしに、涼子先輩は言った。
「苦労したっていいの。翠ちゃんみたいに、誰からも好かれるような子に育てたいのよ」
ほら、ね、と涼子先輩が周りをぐるりと見渡して言った。
本当に良かったね。
「幸せな親のとこに生まれてくるんだからさ。ハイパー幸せに決まってんじゃん!」
「翠ちゃん……」
泣き出した彼女の肩越しに、くすぐったそうに微笑む本間先輩が立っていた。
「翠ちゃん」
涼子さんが、あたしの手を握った。
その手のぬくもりは格別だった。
「先輩っ……涼子先輩!」
おめでとう、涼子先輩。
一度引けたはずの涙が再びあふれた瞬間、あたしの体は涼子先輩の腕の中にあった。
なんて細くて華奢で、頼りなさげな腕なんだろう。
「涼子先輩」
でも、なんておおらかで安心感のある細腕なんだろう。
「ミラクル元気な赤ちゃん産んでね……約束だかんね」
あたしは、細腕にしがみついて、泣いた。
もう、あたしたちに言葉は必要なかった。
なにせ、確かにあの補欠エースを奪い合った仲なのだ。
戦友にしか分からない何かが、あたしと涼子先輩の間に生まれていた。
「うん、約束ね。私、翠ちゃんみたいな女の子を産むの。この子、女の子なんだと思う」
そんな気がするの、そう言って、涼子先輩があたしの頬を撫でた。
「へっ? あたし?」
「そう。友達にはもちろん、先輩にも後輩にも、ライバルにさえ好かれる翠ちゃんにたいな子」
「……やめといた方がいいよ。あたし、先輩が思ってるような子じゃないからさ」
こんな跳ねっ返り、損するだけなのに。
ううん、と涼子先輩が首を振った。
「あたしみたいにだけは育てないでね。苦労するぞ」
へへ、と苦笑いしたあたしに、涼子先輩は言った。
「苦労したっていいの。翠ちゃんみたいに、誰からも好かれるような子に育てたいのよ」
ほら、ね、と涼子先輩が周りをぐるりと見渡して言った。