夏の空を仰ぐ花
「あたしはさ」
補欠のワイシャツをくしゃくしゃに掴んだ。
「補欠と一緒に行けるなら、どんなとこでもいいんだよ」
無人島でも、サファリでも、砂漠でも、アマゾンでも、どこだってへっちゃらさ。
例えそこが、世にも恐ろしい地獄絵巻の中だったとしたも。
「だから、連れてって」
あたし、ついてくよ。
一生、補欠についてくから。
「だから、ずっと一緒に居てくんないかなあ……」
これから先もずっと、あたしの隣にいて。
「いるだろ、もう。だから、あんまり泣かないでよ、翠。笑って……」
「……あ」
補欠の唇がそっと落ちて来る。
付き合ってから今日まで何度かキスを交わしたけれど、今日のキスが一番優しいキスだった。
それで、一番ドキドキした。
補欠の全部を受け止めたくて、あたしはそっと目を閉じた。
唇を離した瞬間に、あたしたちは目を合わせて同時に吹き出した。
「「炭酸の味!」」
今日のキスはレアな味だ。
しゅわしゅわ、しゅわしゅわ。
さわやかな爽快感と、ほのかな甘さ。
笑い合っていると、ビュウッと風が入って来た。
カーテンがふわりと膨らんだ。
ああ、本当に夏が終わろうとしてるんだな、そう思った。
晩夏の風に含まれた、秋の気配。
ゴトン、と音がして、それは窓辺から一球のボールが落ちた音だった。
ゴロゴロ、床を転がるボール。
「あ、ボールが落ちたぞ」
拾おうとして仰向けのまま手を伸ばすと、
「いいから」
あたしの手を捕まえて、補欠が言った。
「あとで拾うから」
補欠のワイシャツをくしゃくしゃに掴んだ。
「補欠と一緒に行けるなら、どんなとこでもいいんだよ」
無人島でも、サファリでも、砂漠でも、アマゾンでも、どこだってへっちゃらさ。
例えそこが、世にも恐ろしい地獄絵巻の中だったとしたも。
「だから、連れてって」
あたし、ついてくよ。
一生、補欠についてくから。
「だから、ずっと一緒に居てくんないかなあ……」
これから先もずっと、あたしの隣にいて。
「いるだろ、もう。だから、あんまり泣かないでよ、翠。笑って……」
「……あ」
補欠の唇がそっと落ちて来る。
付き合ってから今日まで何度かキスを交わしたけれど、今日のキスが一番優しいキスだった。
それで、一番ドキドキした。
補欠の全部を受け止めたくて、あたしはそっと目を閉じた。
唇を離した瞬間に、あたしたちは目を合わせて同時に吹き出した。
「「炭酸の味!」」
今日のキスはレアな味だ。
しゅわしゅわ、しゅわしゅわ。
さわやかな爽快感と、ほのかな甘さ。
笑い合っていると、ビュウッと風が入って来た。
カーテンがふわりと膨らんだ。
ああ、本当に夏が終わろうとしてるんだな、そう思った。
晩夏の風に含まれた、秋の気配。
ゴトン、と音がして、それは窓辺から一球のボールが落ちた音だった。
ゴロゴロ、床を転がるボール。
「あ、ボールが落ちたぞ」
拾おうとして仰向けのまま手を伸ばすと、
「いいから」
あたしの手を捕まえて、補欠が言った。
「あとで拾うから」