夏の空を仰ぐ花
「何言ってんだよ。大切な物じゃんか」
ボールもグローブも、何より大切にしているくせに。
「でも、こっちの方が大切だから」
「へ……」
小さなキスをくれた直後、補欠は言った。
「翠の方が大切だから」
これは、まいった。
なんだか、お姫様にでもなった気分だ。
補欠が手を握ってきた。
だから、その手に指を絡めて握り返した。
このまま、補欠に包み込まれたまま化石にでもなりたいものだ。
「あ……あの、補欠……」
柔らかなソファーに沈む体。
「うん?」
「いやいや、そうじゃなくて……」
補欠の優しい手が制服の蝶ネクタイに伸びて、するするほどいた。
水色のネクタイが、はらりと床に落ちる。
「この先に進むにあたって、ひとつ確認しておきたいのだが」
ワイシャツのボタンを外そうとする補欠の手を掴んだ。
「なに?」
「あたし、めちゃくちゃ高額なんだよね」
プ、と吹き出したあと、補欠がこくりと頷いた。
「うん、知ってるけど」
「そか。ちなみに、あたしの未来はもっと高額なんだけど平気か?」
「それ、金額にしていくら?」
「億とか兆とかの問題じゃない。腰抜かすくらい高額」
「そう。じゃあ、それ。出世払いの分割払いにしてもらえる?」
「えー……分割う? まあ、特別に許可してやってもいいけどさ」
本当は初めて迎えたシチュエーションが照れくさくて、恥ずかしくて、どうにもならないくらい緊張していた。
必死にはぐらかして逃げ腰のあたしを、補欠は見破っていたのだと思う。
ボールもグローブも、何より大切にしているくせに。
「でも、こっちの方が大切だから」
「へ……」
小さなキスをくれた直後、補欠は言った。
「翠の方が大切だから」
これは、まいった。
なんだか、お姫様にでもなった気分だ。
補欠が手を握ってきた。
だから、その手に指を絡めて握り返した。
このまま、補欠に包み込まれたまま化石にでもなりたいものだ。
「あ……あの、補欠……」
柔らかなソファーに沈む体。
「うん?」
「いやいや、そうじゃなくて……」
補欠の優しい手が制服の蝶ネクタイに伸びて、するするほどいた。
水色のネクタイが、はらりと床に落ちる。
「この先に進むにあたって、ひとつ確認しておきたいのだが」
ワイシャツのボタンを外そうとする補欠の手を掴んだ。
「なに?」
「あたし、めちゃくちゃ高額なんだよね」
プ、と吹き出したあと、補欠がこくりと頷いた。
「うん、知ってるけど」
「そか。ちなみに、あたしの未来はもっと高額なんだけど平気か?」
「それ、金額にしていくら?」
「億とか兆とかの問題じゃない。腰抜かすくらい高額」
「そう。じゃあ、それ。出世払いの分割払いにしてもらえる?」
「えー……分割う? まあ、特別に許可してやってもいいけどさ」
本当は初めて迎えたシチュエーションが照れくさくて、恥ずかしくて、どうにもならないくらい緊張していた。
必死にはぐらかして逃げ腰のあたしを、補欠は見破っていたのだと思う。