夏の空を仰ぐ花
「……シルバーだった気がせんでもない」


あたしはすぐさま振り返った。



「……まじかいな」


遠ざかっていく、背中。


……キョウヤ。


胸がぎゅうっと縮まって、鳥肌が立った。


理由は分からない。


理由なんてない。


だけど、原因なら明確だった。



これは、運命だ。


そう思った。


ケンゴというやかましいマルコメとじゃれあいながら遠ざかるその背中を見つめながら、


「運命じゃ」


思ったことが口を突いて出ていた。



夕焼け空。


夕陽が降り注ぐ、優しい色のグラウンド。


不法侵入。


最初は父に似たその純粋な瞳に目を奪われた。


優しくて、真っ直ぐな、瞳。


左利き。


世界はこんなに人で溢れ返っているのに。


ひとごみだらけなのに。


巡り巡って、同じ時代に生まれ、偶然にも同じ高校を受験して。


同じクラスになって。


だって、世界にはごまんと人がいるのに、同じ空の下で、同じ場所で、出逢った。


「運命じゃなかったら、じゃあ、何だって言うのよ!」


「はあっ?」



< 63 / 653 >

この作品をシェア

pagetop