夏の空を仰ぐ花
あたしの好きな人は、夏井響也です。


彼にベタ惚れです。


好きなんです。


だから、ライバルはさっさと名乗り出な。


正々堂々、勝負しよう。


そう言っといた方が、やりやすい。


先に唾を付けたもん勝ちだ。


恋は先手必勝。


これ、鉄則。


いいふりぶっこいて、後悔してる暇はない。


かっこつけてらんない。


なりふり構ってられん。


それくらい、あたしにとってこの恋は必死なのだ。


運命ってやつを感じてしまったからだ。


簡単に諦めてなるものか。


絶対に手放してなるものか。


何が何でも絶対に誰にも譲れないし、譲る気なんかさらさらない。


これっぽっちも。


明日、この世界が滅びようとも、この恋だけは譲れない。


あの日。


底なし沼に落ちた瞬間から、あたしは毎日、全力だ。


全力で補欠に体当たりしている。


のに。


気付かない補欠は、一体、何者なんだろう。


「ま。とにかく頑張れよ。おれたち、陰ながら応援してるからさ」


光貴があたしの肩をポンと弾くと、みんなが各々に散らばって行った。


「まっかしとけ!」


「それにしても」


と結衣がラスト一本のポッキーを口元へ運びながら、呆れ顔で言った。



< 72 / 653 >

この作品をシェア

pagetop