夏の空を仰ぐ花
「たーのーむー!」


あたしはカバリと床に両手をついて、頭を下げた。


まるで、卑弥呼様に祈祷する邪馬台国の民のように。


「このあたしと、種目を代わって下さい! このとーりー!」


あたしは無我夢中になって土下座しまくった。


野球とバスケ。


交代してもらえるのなら、土下座なんてへのかっぱだ。


代わってもらえるのなら、寝下座してやろうか。


「大輔、頼む! お願いします!」


もう、何だってする。


補欠に、お涼を近づけてなるものか。


土下座しながら、その思い一心不乱だった。


「うわっ……やめろって、翠」


頭上から慌てふためく大輔の声が降ってくる。


「頼むから、頭上げてくれよ」


「できん! 代わってくれるまで、上げれんのだ!」


これは、あたしの自己中なわがままだってことは、重々承知のうえ。


でも、どうしても引き下がることはできない。


目の前にラストチャンスが転がってるってのに、掴まずしてどうする。


何だってする。


諦めない。


もう、なりふりかまってらんない。


「お願いします!」


明日、あたしを、補欠の一番近くに居させて下さい。


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