夏の空を仰ぐ花
「お願い! お願いします!」


床に額をべったりつけて、あたしはぎゅうっと目をつむった。


お願いします。


恋の神様。


加賀大輔様。


どうか、このガサツでズボラなあたしに、恋のチャンスを。


シンと静まり返った教室にぽつりとひと粒のため息が落ちて間もなく、頭上から降ってきた。


「わ……分かったよ」


今……


「……は」


今、なんと……?


あたしは床に額を貼り付けたまま、カッと目を見開いた。


「今……なんと?」


その体勢のまま、そーっと顔だけを上げた。


「分かったから」


大輔が、神様に見える。


「だから、その土下座。やめてくれ」


そう言って、大輔は困り果てた顔で肩をすくめて、笑った。


「土下座。そろそろまじでやめてくれないと、おれの身に危険が……」


ほら、と大輔は教室をぐるりと一周指差した。


「お……おおお。デンジャラス」


結衣も明里も、あっこも、大輔の親友である光貴まで。


みんながジットリとしたまとわりつくような目つきで、大輔を睨んでいた。


「な。これは危険だろ?」


大輔がダンゴ虫みたいに背中を丸めた。


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