夏の空を仰ぐ花
「はあ? あたしにおごらせる気かよ」


あたしは、大輔の手をべんっと乱暴に振りほどいた。


「安いもんだべ」


大輔がにやりと不適な笑みを漏らす。


「焼きそばパン5個で、明日は響也と一緒に居られるんだぜ」


「ぬっ」


「響也に、さっきの女、近づけさせたくないんだろ?」


そして、大輔は偉そうに腕組みをした。


大輔の逆襲だ。


「おいしい話だと、おれは思うけどね」


ちくしょうめ。


そう来たか。


と思いつつ、確かに、とすぐに納得した。


確かに。


「デリシャース」


おいしいどころの話じゃない。


うますぎる。


揚げ立ての唐揚げにたっぷりのマヨネーズを塗りたくって、思いっきりほおばるくらい、うますぎる話だ。


なんてったって、焼きそばパン5個で、明日は補欠と一緒に居られるのだ。


「よっしゃ」


あたしは、大輔に左手を突き出した。


ギラリと大輔の目が輝く。


「お。その気になったか」


周りでクスクス笑い声がわいた。


「よかろう。その条件、丸飲みしてやろうじゃんか」


「よーし。さすが、響也命の翠だな」


と大輔があたしの左手を握り返す。



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