夏の空を仰ぐ花
「翠の気持ち、響也に届くといいな」


根気強く頑張れよ、そう添えて、光貴と大輔も教室を出て行った。


「さて。一件落着ってことで、マック行くべ」


結衣が鞄を肩に掛けると、


「やれやれ。翠と一緒に居ると、必ず何かが起こるな」


まあ、退屈しなくていいんだけど、と明里が歩き出す。


「いや、悪いけどマックはパス」


でも、あたしはまだ帰る気にはなれなかった。


「結衣、明里」


あたしの中ではまだ、一件も落着していないからだ。


「悪いけど、先に帰ってくれ」


あたしにはひとつ、やり残していることがある。


机に広げっぱなしにしていた私物をガチャガチャと、ぶっきらぼうに鞄の中へ放り込んだ。


「なに、まだ不満があんの?」


結衣が振り向く。


「ある」


「はあ? 今度はなに?」


面倒くさそうに、明里ががっくり肩を落とした。


「補欠のとこに行く」


ずっしり重い鞄を肩に掛けて、あたしはふたりを追い越した。


「明日、ずっと一緒に行動してもらえるように、補欠に頼んでくる」


はあ? 、とふたりのため息が重なって天井に上っていく。



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