3月1日【短編/企】
「だけど……今から一ヶ月くらい前だったかな。紅子、髪型変えただろ?」
「え……あ、うん。
長かったから、思い切ってボブにしたんだけど……嫌だった?」
そう言うと彼は首を横に振る。
「嫌とかそういう問題じゃない。だってその髪型、初めて俺が紅子と出会ったときの髪型だったんだ。それで、気付いた。君はまもなくタイムスリップして、10年前の俺に会うんだって」
その言葉に驚く。
啓一は私が時をかけて昔の啓一に会いにいくのを知ってたのか。
「だから、焦った。あの日の君はなんでか俺が浮気してると思ってただろ?そうなる前にこれを買って早く安心させようと思って……」
そう言って啓一はポケットから何かを取り出す。
その小さな箱を見て私は声を失った。