原石のシンデレラ
「……はい。何でしょうか……?」

炉惟の真剣で厳しい表情に、身が縮こまる。


「……雪詩さん、一緒に暮らしませんか」


「……………」


唖然として、開いた口が閉じない雪詩の表情を見て、少々控えめに微笑み付け足した。

「ーー今すぐ、と云う訳では有りません。……でも、雪詩さんは両親を亡くされていて頼る大人がいらっしゃらないと伺いましたし…それに、この間じぃやが、雪詩さんを家まで送った時に拝見した建物の外見が、お若いお嬢さんが住むような所では無いように見えて、余り防犯がしっかりしてるようには見えない……と聞きました。」


炉惟の言葉の後に、じぃやは申し訳なさそうに、頭を低くして付け加えた。


「雪詩様、これは私の個人的な意見で御座います。不快な気持ちにさせてしまい申し訳ありません」


「じぃや、大丈夫よ。本当のことだから」


ーーそう、本当のことだから。

私が住んでるアパートは、けして新築では無いし、ボロくて防犯はしっかりしてないし、正直、物騒過ぎて何か遭ってもおかしくない程だ。


…だからといって、この凡人の私が、炉惟の家に居候だなんて……。


友達の家に居候するのとは訳が違う。




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