原石のシンデレラ
―――その冬真お兄ちゃんが……。




――今……私の目の前に居る。




「……オバサンとオジサン、事故で亡くなったって聞いたよ」



冬真お兄ちゃんの言葉で私の頭の中の回想がピタリと止まり、嫌でも現実に引き戻される。


「………うん」

俯き、きゅっと唇を噛む。


「……辛かったよな」


ガサガサとサミット袋の中身がぶつかり合う音が鳴らして、私に近付く冬真が抱きしめてきた。


ふわりと柔らかな香りが私の鼻をくすぐり、久しぶりの冬真の暖かな温もりが私の目頭を熱くさせる。


広くて大きな胸の中で、私は静かに涙した。



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