原石のシンデレラ
「――ろ、炉惟さん……」


お互いを見つめ合って黙っている私達の間を割って入ってきた冬真は険しい表情で炉惟を睨みつけていた。


「この男が、雪詩の言ってたロイって奴か?」

「うん…」

「雪詩さん、この方は…?」


「俺は雪詩の幼なじみの冬真だ。」

雪詩が答える前に冬真が、先に口を開くと、炉惟はニコリと笑みを浮かべて――「はじめまして。僕は炉惟と言います」…と、挨拶に握手を求めたが、冬真は不服そうに、その手を払いのけた。


「握手なんか要らないよ。ライバルなんかと呑気に手なんか握る必要なんて無いからね」

「お、お兄ちゃん…。」


不安になって冬真の裾を掴むと、雪詩の頭を優しく撫でながら呟いた。


「大丈夫だよ。雪詩」


「……冬真さん。貴方は……」


「そうだよ、俺も好きなんだよ。……それに俺は幼い頃から雪詩を見てきた。誰よりも知っている。――君みたいな世間知らずの金持ちのボンボンなんかに簡単に雪詩は渡せない」


「…僕も同じ気持ちですよ。雪詩さんは誰にも渡すつもりはありません」


「ふん、生意気言って……ハッキリ言わしてもらう。今まで何も不自由したことがなく苦労も何もないまま過ごしてきた君は…両親を亡くした不幸な少女を見て、ただ同情しているだけなんだよ。物珍しいモノに興味を抱いてるだけなのさ。」


「冬真お兄ちゃん、やめて!言い過ぎよ」



「――僕はっ!!………ッッ……」


炉惟は途中で言葉を詰まらせて、唇を噛み締めて拳を握り締めていた…。




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