原石のシンデレラ
――――
―――


雪詩は冬真に抱き締められてる間、炉惟の顔が頭の中で浮かんでいた。


チラリと視線を外すと、じぃやと炉惟が車に乗り込もうとする姿をみかけて、雪詩は慌てて冬真から離れて走り出す手前で、ガッチリ腕を掴まれた。


「――雪詩!行くなよッッ」


「……お兄ちゃん。私、炉惟さんに話たいことが――。」


苛立ちに声を荒げる冬真から離れようと必死に抵抗することも虚しく終わり、炉惟達が乗った車が、発進して行くのを雪詩は呆然と見つめていた。。


「…………。」


冷たいコンクリートの地面に視線を落とし、ボーっとしている雪詩の肩に手を置くと冬真は軽く溜め息を吐いて言った。


「……帰るぞ。」


雪詩は黙って頷き、トボトボと家路に向かって歩いて行った――。



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