原石のシンデレラ
「――雪詩さん…。」


「……私、待ってるから。炉惟さんのこと」

「………。」


俯いて黙り込む炉惟に雪詩は近づくと、優しく手に触れた。


「私……後悔してないから。」


ポツリと呟く雪詩に、炉惟は顔を上げて、ポカンと口を開いた。

「え?」



「炉惟さんに出会えたこと……。そして、『"待ってる"』って言ったことも。」


雪詩は言い終えると満面の笑みで、炉惟を見つめた。


「ありがとう。」


「――いってらっしゃい。」


「――いってきます。」




「……パチパチ。。」



炉惟の背後から手をたたく音がして視線をずらすと、じぃやが嬉しそうに笑っていた。


「じぃや……。」


「雪詩様の言葉に、じぃやは感動致しました…。」



そう言って、じぃやはスーツの胸ポケットからハンカチを取り出し、潤んだ瞳をハンカチで押し当てたのだった。
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