原石のシンデレラ
慣れない靴で歩いてると、何度も転びそうになってしまう。


大勢の人達が、ゾロゾロと1つの会場に向かう為、混雑していて、余計にうまく歩けない。


「おっと、すまない」

ぶつかって来た人は、謝って来たが、私はバランスを崩して転びそうになった。

「キャッ…」

「おっと、危ないですよ」


よろけた私を軽々と、片腕で受け止めてくれて、何とか転ばずにすんだが、炉惟の胸元にもたれかかる状態になってしまって、私は慌てて離れた。


「ご、ごめんなさい…」

「危ないから、手を握っておきますね」


そう言うと、答える前に炉惟は、私の手を握りしめる。温かくて大きな手に包まれた私は、照れくさくて俯いたまま。


「…大丈夫ですよ。リラックスしてください」
そう言って、炉惟はウインクをした。


…私は黙って頷いた。



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