原石のシンデレラ
ーー僕は雪詩に近付き、抱き締めた。

余り強く抱き締めたら、パリンと粉々に砕けそうな硝子のような柔らかな身体を、ふわりと優しく受け止める。


「ーー炉惟さん!?」


「………何故、」


「え…」


「何故、……寂しいなら……寂しいと言ってくれないのですか?」


「それは……」


言葉を濁す雪詩に、僕は1度離れて、雪詩の目をジッと見つめた。


「僕は、貴方の寂しい顔は見たくありません……雪詩さんは、笑顔の方がずっと素敵ですから。」


「…………」


その潤む瞳で目を伏せるから、雪詩の頬に涙が零れ落ちた。


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