原石のシンデレラ
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バイト先のファミレス《ココット》に到着した雪詩は、従業員や、バイトの人に挨拶かけ終えた後、店長の居る事務室をノックした。


《コンコンコン…》

「はぁ〜い…」

「ー失礼します…」
ペコリと会釈をして中へ入ると、相変わらずニコニコとしている店長と目が合う。


雪詩は、気まずい気持ちを振り切るように、前に進み、店長の座っている前まで寄り、
「昨日は欠勤して、申し訳ありませんでした」

…怒られるのを承知で、深々と頭を下げると、返ってきたのは意外な言葉だった。


「ーー木下さん、大丈夫だよ」

「え、でも……」

困惑する雪詩の表情を見て、安心させるかのように言葉を付け足した。

「ーー平日だったから、昨日は、お客さんも少なかったし。そこは全然、大丈夫だったんだよ。……ただ僕自身、個人的に寂しかったけど」


「ーーて、店長…?」


そ、それは…どう言う意味?


「あぁ、ごめんね…。うん、実は…君のことが好きなんだ」


「……………」
ポカンとして立ち尽くす雪詩に、店長は微笑んだまま。


ーー29歳の若さで、此処の店長になって、容姿も…そこそこ悪くないし背も高くて、どっちかっていうと、お兄さん系だから、少しは素敵だな…と憧れは持っていたけれど……。


「で、でも…」

……憧れと、恋愛感情は全くの別物。


「…すぐに、返事は出せないのは分かってるよ。ただ…今日、食事にでもどうかな…?」


「ええと………はい、良いですよ」


何故か頭の中に炉惟の顔が、浮かんできて、それを掻き消すように雪詩は返事をしてしまった。



後から後悔することも知らずに――。
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