原石のシンデレラ
《カラン、カラン。》


来客が来た。もしかしたら、店長かもしれないと思い、私は振り向いた。


「ーー父さん、ただいま。」

「ーーおかえり、広戸(ヒロト)」

ーえ、今…何て言った…?
マスターの顔と店長の顔を、交互に見つめる。

「雪詩ちゃん、お待たせ。」


何事も無かったかのように、自然に雪詩の隣の席へ腰を下ろす。


「あのぅ…マスターと、店長の関係って…」

「…あぁ、親子だよ」
ニコリと笑顔を返す店長の心が全く読めない…。


「……何だ、このお嬢さん、広戸の知り合いか」


マスターが水を入れたグラスを、広戸の前に置いた。


「うん、アルバイトの子なんだ。そして、僕が好きな女の子♪……でも、まだ返事は聞いてないんだけどね」


ーーさらりと父親の前で躊躇も無く、言ってのけちゃう、その余裕な笑みは何ですかー!?

しかも此処の喫茶店が、店長の家だなんて、聞いてないんですけど…。

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