原石のシンデレラ
「私は、エリーゼ。宜しくお願いしますわ。ユキシさん」


そう言った後に、やっと手を離してくれたが、雪詩の手には痛みだけが残っていた。



「ーー炉惟坊ちゃん、誠に申し訳ないのですが…」


じぃやが談話室に入ってきて、炉惟と遠くで話をした後、「申し訳ない。急な用事が出来てしまい、少々席を外させて頂きます…」と、私達に声をかけた。


「ーー大丈夫よ炉惟。私がユキシさんのお相手をしますから」


「ありがとう。エリーゼ頼みましたよ。では…」


パタン…と扉が閉まる音がして、廊下からせわしなく走り去る音が聞こえてきた。


ーー炉惟、お仕事なのかな。


「ーー炉惟はね。18歳の若さにして、父親から仕事に関してのスパルタ教育を受けおり、そして今が大事な時期である実習期間中ですのよ。それが後、5ヶ月続きますのよ。まぁ、大事な独り息子とはいえ、仕事は仕事ですものね。叔父様も厳しくやってらっしゃるみたいですの。」


「そう…なんですか。」


ーー1つ上の炉惟は、私より何倍も優れていて…凄い人だ。


「分かりましたわよね?今が大事な時期なんだって……それに!!」


キッと睨み付ける、エリーゼに雪詩は怯んで言葉がうまく出てこない。


グイッと雪詩の顎を掴み持ち上げて、
「…貴方が居ると、目障りなんですのよ!!……それに、こんな凡人の何処が宜しいのかしら?只の貧乏人じゃないの。両親が亡くなったことを利用して、同情してもらおうとでも思ってたのかしら…?」


「両親は関係ないですッッ」


カッときた雪詩は、エリーゼの腕を振り払い、理性を失う位に叫びまくった。


突然の不慮の事故で両親の死を目の当たりにした雪詩。


辛かったけれど、前に進まなくちゃと。
一生懸命だった。


ーーーそれなのに……。



――――それなのに、あんまりだわ
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