黒猫劇場
「僕も同じさ」

「ヴァージナルはさ、いまは好きなことしたらいいんだよ。音楽に興味持つことも素敵だと思う」

 そんなリグは、よく僕のヴァイオリンを触りたがった。先生に怒られるからと、探偵社の屋根裏部屋で。先生には全部お見通しだったけれど。

「ねぇ、ヴァージナル。さっき、別れ際、先生あたしになんて言ったと思う?」

 さっき。
 不安そうなリグを抱き締めた時のことだろうか。僕は首を振った。

「どんな結果になろうとも、君にとって、大きな一歩になろう」

 成功しなきゃ帰れないの分かってるくせに。彼女は口を尖らせて、ここには居ない先生を笑った。
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