黒猫劇場
僕は人影のない廊下を歩いていた。
薄暗く乾いた空気に、足音だけが谺する。
光が漏れているのは職員室だけみたいだ。
廊下の先にぼぉっと明るくなっている場所があったので、すぐに分かった。少し開いたドアから、明かりが細長く廊下に伸びている。そこを通り過ぎて、玄関から外へ出た。
学校を出て駅がある大通りに着いた頃には、太陽の代わりに満月が街を照らしていた。けれど、街中には満月以上に目をひくものがあった。
来月一か月間行われる降誕祭のためのツリーが、今年はじめて広場に大きくそびえていた。
ツリーの周りには人だかりが出来ていた。子供も大人もツリーに眼を奪われて、動きを止められていた。まるで、チェスボード上の駒みたいに。
そのツリーのせいで、街はたくさんのイルミネイションで溢れている。それはまるで、閉園間際の遊園地みたいで、僕は少しわくわくした。
「もう、ツリーがたってる。今朝通った時は無かったのに」
僕は呟いた。
それでも、お祭り前の騒がしさとか、眩しすぎる電灯とかに書き消されたみたいな、僕の声は僕にも聞こえないで、何処かに紛れてしまった。
薄暗く乾いた空気に、足音だけが谺する。
光が漏れているのは職員室だけみたいだ。
廊下の先にぼぉっと明るくなっている場所があったので、すぐに分かった。少し開いたドアから、明かりが細長く廊下に伸びている。そこを通り過ぎて、玄関から外へ出た。
学校を出て駅がある大通りに着いた頃には、太陽の代わりに満月が街を照らしていた。けれど、街中には満月以上に目をひくものがあった。
来月一か月間行われる降誕祭のためのツリーが、今年はじめて広場に大きくそびえていた。
ツリーの周りには人だかりが出来ていた。子供も大人もツリーに眼を奪われて、動きを止められていた。まるで、チェスボード上の駒みたいに。
そのツリーのせいで、街はたくさんのイルミネイションで溢れている。それはまるで、閉園間際の遊園地みたいで、僕は少しわくわくした。
「もう、ツリーがたってる。今朝通った時は無かったのに」
僕は呟いた。
それでも、お祭り前の騒がしさとか、眩しすぎる電灯とかに書き消されたみたいな、僕の声は僕にも聞こえないで、何処かに紛れてしまった。