お化け屋敷の住人


豹は未だにわたしの腕を離してくれない。


「逃げないから離して」

「あ?」

「腕、離して」

「あー!わりー」


豹は全然悪いと思ってないような言い方で、腕を離してくれた。

飄々(ヒョウヒョウ)としてる。

“豹”だけに……。



「おまえ何か知ってんだろ?」


わたしがくだらない事を考えていたら、豹はいきなり訳の分からない事を言い出した。


「知ってる?」

「だから、戻ってきた理由!」

「戻ってきた?」


戻ってきたって何?

何が戻ってきたの?

まさかわたしじゃないよね?

わたしは戻ってきたと言われる程、この街にいないし。

なんなんだ?

主語言ってよ。


「豹、無駄足だったんじゃね?」


今まで黙ってわたしを睨みつけていた來輝が言った。



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