お化け屋敷の住人


***


5月に変わるのと同時に俺のクラスに来た転校生。

こんな時期の、高校もあと一年で卒業の、しかも5月という中途半端な時期の転校生。


そんな転校生をクラスメートは“訳あり転校生”と呼んだ。


エスカレーター式のこの学校はただでさえ外部生を受け入れない生徒が殆どなのに、そんな“訳あり転校生”を受け入れる生徒は外部生の中にもいなかった。


転校生自身も自分の殻に閉じこもっているような気がして、偶然にも隣の席になった俺はどうしたらいいか困った。

声をかけるべきか、そっとしておくべきか……。



だけどある朝彼女が他の生徒と会話をしているところを初めて見た。

彼女は普段の無表情とは打って変わって、人間味のある表情を浮かべていた。

ああ、これが本来の彼女なんだろうなと思った。


話しかけてみれば、全然普通の女の子だった。

篠宮はきっと自分を自分からは出せないコなんだと思う。

何があったかは知らないけど“訳あり転校生”っていうのも外れてない筈。


何かと心配になるコだな。

出来るだけ気にかけてあげたいな。



「篠宮!」

「なに?」

「髪の毛にご飯粒ついてる」

「うそ!?」

「いや、まじで」



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