お化け屋敷の住人


「どうかした?」


定位置に戻って座りながら真に聞いてみた。


「おまえ就職したいのか?」


わたしは進路希望調査の用紙に“就職”と書いていた。

進学するお金なんてないし。

行きたい学校もなければ、就きたい職業もない。


だから高校を卒業したら、就職することにした。

もちろん真には相談してない。

だって、わたしの将来はわたしもので真には関係無いと思ったから。

この奇妙な関係も高校を卒業してわたしが独り立ち出来るまでだと思ったから。


「したいって言うか、それしか選択肢ないし」

「進学があるだろ」

「進学は出来ないよ」

「なんで」

「そんなお金ないもん」

「それだけか?」

「ん?」

「進学しない理由はそれだけか?」

「行きたい学校もない」

「あとは?」

「あ、あと?」


それだけでもう理由として充分じゃん。

まだ理由出さないといけないの?


「もうないんだな?」

「…うーん」

「だったら進学しろ」

「え!?」

「もっとまともな理由なら考えたけどな、そんな理由ならちゃんと進学しろ。学校行け」


そんな理由とは何事だ!?



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