スターフィッシュ‼︎
「あれ、ハセバンの長谷部さんじゃね?」
ゆーたがこっそりと王子に耳打ちをする。
審査員席の後ろ――フロアの壁際で
グラサンをかけたおかっぱ頭の男性がタバコを吸っていた。
「おおっ、本当だ。俺らラッキーかも」
王子が音量0でベースをベチベチ叩きながら、ニヤリと王子スマイルを浮かべる。
え? 長谷部さんって?
「本戦のゲスト審査委員ですよー。この青春スターダムの企画者の1人です!」
こそこそ声で良夫さんが教えてくれた。
「しかもハセバンっていったらこの前月9のドラマ主題歌歌ってたよな。は? お前知らないのか!?」
ごすっ、と王子のげんこつをくらう。
ええええええ!? そんな有名な人なんだーー! すごーい!
ちょうど前のバンドのインタビューが終了したらしく、審査員の1人が長谷部さんに挨拶をしに向かった。
長谷部さんは審査ではなく、地区決勝の様子をふらりと見に来ただけらしい。