スターフィッシュ‼︎
爆音の中、ちらっと後ろを見てみた。
3人も音の変化に気がついたのか、あたしを見る。
しかし、3人とも音の薄さをカバーするように、自分たちの音に感情と勢いを更に込めたように思えた。
「美緒! いけーーー!」
王子があたしに大声で叫ぶ。
『音楽に出会っていなかった頃の自分には戻りたくねーし。俺は前に進むしかないんだよ』
絶対に負けない! ぶちかましてやるんだ!
『TAKE OFF』最後のサビが始まる。
あたしは体を軸にギターをぐるっと腰まで回し、目の前のマイクを両手で握った。
『風と音と雲を巻き込んだ、僕はいつまでも上昇気流さ』
足元のモニターに右足をかけて、
スタンドについたままのマイクを両手に全力で声を振り絞った。
えーい! スタンドが邪魔だ!
結局スタンドからマイクをひっこ抜き、ギターをぶら下げながら、ステージ上で頭を振って暴れまくる。
『僕はいつまでも君たちが大好きだーーー!』
気がつくと、マイクを両手で握りしめて、高音のロングトーンで曲を締めていた。
一瞬、静かになってから、アウトロに突入する。
まだ終わりたくない、そんな気持ちが3人の演奏から伝わってくる。
あたしは泣きそうになっていた。
理由は分からないけれど。