スターフィッシュ‼︎

しかし、その時、

ぱしっ、と誰かに肩を叩かれる。


――え!?


「…………」


慌てて振り返ると、ゆーたが鋭い目であたしを見ていた。


そして、早く戻れと目配せをした後、スタスタと入口の方向へ歩いていった。



あ、ゆーたも今の話、聞いていたのかな……。



何事もなかったかのように、

あたしとゆーたは無言でロビーのソファーに座っていた。


ちなみに良夫さんはエレベーター付近で、

怖そうなロン毛のお兄さんに握手をしてもらっていた。


「……悪ぃ、待たせたな。本戦のことでちょっとスタッフから連絡事項があって」


王子が奥からあたしたちの方へ戻ってくる。


「ああ、帰るべ」


ゆーたが静かに立ち上がる。

あたしも奥歯を噛みしめたままゆっくりと立ち上がった。



何となくピリピリした雰囲気があるあたしたちだったけど。



「いや~、あのジュードマン様(有名メタルバンドのギタリスト)と握手しちゃいましたよ~! 

今日ここでラジオ収録するってブログに書いていまして。まさか会えると思ってませんでした! 

しかもめちゃくちゃいい人でした!」


大分痩せたはずなのに、興奮で滝のように汗をかいた良夫さんの姿があった……。


うん。良かったわね、良夫さん……。




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