スターフィッシュ‼︎
「あ、美緒ちゃ~ん! そろそろ髪の毛セットするからおいで~」
ハスキーで太い雪乃さんの声は、がやがやしたフロア内にもよく響く。
「はーい!」
次のバンドの演奏が始まる前にあたしは楽屋に向かった。
バスドラやベースの低音が楽屋の中にも響いてくる。
時々、お客さんの拍手や歓声も聞こえてきた。
そんな中、ブラシやピンを使って、あたしの髪の毛をセットする雪乃さんの姿が楽屋の鏡に映っていた。
時々、雪乃さんのワンピの袖のフリルがあたしの目の前を横切っていく。
「美緒ちゃん金髪似合うね! 絶対ステージ映えするよ!」
「ありがとうございます! 思い切って染めて良かったです~」
狭い楽屋の壁には色々なバンドのステージパスが貼られていた。
知ってるバンドさんの名前もいくつか目に入る。
ん? おおっ!
『柏GROWL BACK STAGE PASS 20××年5月30日 STARFISH』
ちょうど1年前、ここのライブハウスに初めて出た時のパスを見つけた。
たぶんゆーたか誰かが貼っておいたのだろう。
ちなみにSTASRFISHの最後のSHの部分が隠れるように、
その上からザ・クリントンズのパスが被せて貼られている。このやろっ!