スターフィッシュ‼︎

曲に入る前、後ろの3人をちらっと見た。


ゆーたはギターのチューニングを終え、

腰に手を当てながら、切れ長の目をしっかりと見開き、頷いた。

おおっ、これはかなーり気合い入ってるぞ!


良夫さんはニコニコと笑顔のままだ。

あたしもつられて笑いそうになるけど、我慢我慢!

良夫さん……本当に純粋にこの場を楽しんでるんだろうな。


そして、王子。

目の前のお客さんたちからの声に笑顔を返した後、

急に真剣な顔になり、ベースを構え、ゆっくりとあたしを見た。



その瞬間、あたしはさっきのキスを思い出した。



『俺様への愛を全力で歌え』って。



そんなのずるいよ。


だってこの曲は――。



心を整えるように大きく息を吸い、

ギターの6弦を震わせながら、あたしは歌い始めた。

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