スターフィッシュ‼︎
「…………」
ライブ後のリラックスした雰囲気から、
突然、しーんと張り詰めた空気になった楽屋の中。
外から、あたしたちの次のバンドの歌声がかすかに聞こえてきた。
うーん、激しいロックンロールで格好よさげだけど、
ちょっとボーカルが細い声で音に埋もれているなぁ。
中々王子が話し出さないので、あたしはそんなことを思っていた。
サビに入ったところで、ようやく沈黙が破られた。
「ごめん。俺、実はあるところからオーディションの誘いを受けてて……」
そうか細い声を出した王子は、
前髪で目が隠れるくらいに下を向いていた。
ゆーたと良夫さんは、無言でその様子を見つめ続けている。
え……!
王子、もしかして――。
「嫌だ! そんな……ふがっ!」
反射的にあたしが大声を出すと、王子は、まあ待て、とあたしの口を塞いだ。
「実はちょっと迷ってた。行くだけ行ってみようかな、って。
……でも、一瞬でもそう思った自分をぶん殴ってやりたいと今は思っている」
「…………」
あたしたち3人は表情を変えないまま、王子の低い声を聞いていた。
どういうこと?
あたしは軽く首を右に傾げた。