鋼鉄の国のアリス
陽のささない路地裏にあっても輝きを失わないやわらかな金の髪。

頭には猫のような耳を持ち、しかし足の間から覗く尻尾は犬のもののようで。

虚空を見つめるのは翡翠の瞳。

そこに光はない。

首には鎖を、頬には刺青を。

一糸纏わぬその姿に人々は侮蔑の視線を投げて通り過ぎていく。

アリスは周囲の人間の目線を追い、日陰に横たわる少年の姿を見つけた。

そして彼の左頬に施された刺青に目を留める。

彼女の養父と同じものがそこにあった。

< 3 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop