だからこそ、キミは。



梨花は声を荒げていた。


ちゃんと、私の目を見て。
涙をいくつも零しながら、必死に。



今思えば、こんな風に梨花と向き合ったのは初めてかもしれない。




「爽しか、見えてなかったんだよ…!」



―…あぁ、やっぱり。


私は梨花を、憎めないじゃない。



『……うん。』



ふいに、私の目からも涙が零れ落ちていた。


そして、肩を震わせ、手のひらで顔を覆う梨花を両手で抱きしめる。



『大丈夫だよ、梨花。』



恋には、誰が悪いとか存在しないから。



< 229 / 437 >

この作品をシェア

pagetop