だからこそ、キミは。
私がかすれるぐらいの声で先生を呼び止めたのと同時に、少し乱暴に掴まれた私の右腕。
うっすらと感じる誰かの温もりが、滲むように私の思考を引き戻させる。
『……なんで。』
せっかく、先生が私の蚊の鳴くような声を見つけ出してくれたのに。
なんで私は、引き止めることができなかったんだろう。
―…ねぇ、なんで。
なんで佑くんが、私の右腕を掴んでいるの?
「……美優。」
佑くんの、冷たいひんやりした手。
馬鹿みたいに、覚えているのはなぜだろう。