だからこそ、キミは。
微かに触れる、先生の胸板。
聞こえる鼓動は、思ってるよりもずっと、早いものに感じた。
『……っ。』
触れたい、と。
衝動的に感じた。
先生が与えてくれる温もりが、かすれる程度の胸板だけじゃ満足できなくて。
もっと。もっと。
先生の温もりに、包まれたいと思ったの。
「美、優……?」
不安だったの。
先生との関係は、いつだって先が見えなくて。
先生からは“好き”とは言ってくれない。
抱き合ったのは、たった1回のあの瞬間のみ。
これだけ月日を暮らしているのに、キスさえも、私はもらったことがないの…。