だからこそ、キミは。
そんな姿を見るだけで泣きそうになるなんて、あんまりだ。
―――…先生。
私、気づいていたよ。
いつもと同じ少し薄汚れた白衣に、黒縁メガネ。
無造作な髪や白衣の下に隠れたネクタイは、全然変わらないのに。
―…指輪だけが、その薬指にはめられていなかったこと。
こんなことされたら、期待しちゃうじゃない。
「……。」
歩み寄ってきた先生は、無言で私の髪の毛を優しく撫でた。
クシャッ、て。
私の髪と髪の間に、自分の手を滑らせながら。
久々の感覚に、胸がギュッとする。