だからこそ、キミは。
一瞬だけの小さな沈黙と共に、浮き彫りになった時計の音。
やがてそれさえ聞こえなくなった世界には、私と先生の2人しかいないのではないかと錯覚に陥る。
「……ん。」
先生が、ゆっくりと、瞼を下ろした。
視界に入ったのは、目を閉じるとより長く見える、先生のスラリと綺麗な睫で。
私は音が出ないよう、慎重に先生の黒縁メガネを外した。
『……。』
なんて、綺麗なんだろう。
メガネが外されて浮き彫りになった素顔は、誰もが目を留めるくらい綺麗で。
“カッコいい”じゃないの。
“綺麗”で“美しい”の。