だからこそ、キミは。



『…なんでよ。忘れて、よ…。』




声が、震える。



体に駆け巡ったのは、嬉しいのか悲しいのかさえわからない、曖昧な感情。




『そんなこと、言わないで…。』




煮えきれない感情が、目頭を熱くするから。




「……上園。」




こういう時に限って、なんで先生の声が甘く心に響くんだろう。


こういう時に限って、なんで冷たさではなく、温かい瞳をするの?




その声や、その瞳。

上から私の顔を覗き込むような横顔は、佑くんに似すぎている。



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