だからこそ、キミは。
小指で崩れてしまうもの
崩れてしまうのは、案外簡単で。
それぐらい、私たちの関係は脆いものだったんだと思う。
「急に呼び出して、ごめんな。」
建物に覆われ、人通りが少ない体育館裏。
足元が影で黒くなるような場所をあえて選んだのは、爽くんなりの気遣いだったんだと思う。
「だけど、どうしても言っておきたいことがあって。」
『……うん。』
“うん”しか、言えない。
それしか、言葉が出てこなかった。
聞こえてくるのは、風に揺らされ、かすめる緑葉の音だけ。