君に裁きの鉄槌を
澤「おはよぉ、岬」
『おはよ、吉澤さん』
澤「吉澤さんとか良いから〜ッ!私も岬って呼んでるしぃ」
昨日までの花恋とは打って変わった猫なで声。笑いそうになる自分を必死で抑える。
『じゃあ、何て呼べば良いの?』
澤「花恋で良いよおー!」
『ふぅん…ねえ花恋』
澤「なぁに、岬ぃ?」
『何で、優子はあんな小さくなって震えてるのかな?』
優子の名前を出すと、また固まる花恋。僕は横目で花恋を見つめる。
澤「そんなに優子の事が気になるの…?」
『うん、心配。風邪引いたのかな?声かけてこよう』
立ち上がった僕の服の袖をつかみ、涙ぐんだ目で見上げる花恋。
澤「私以外の子に、優しくしちゃやだよ…」
『……どうして?』
澤「だって!」
『僕は君の物じゃない。
僕自身はいつだって僕の物だ。
誰の思い通りにもならない。
僕を動かせるのはたった一人だけ。
だから僕の行動を、一々君に口出しされたくない』
侮蔑の眼差しで花恋を見つめる。花恋の目から涙が引いて、代わりに強い憎悪の炎が燃え始めるのが見えた。
澤「フフッ、フフフッ、優子…優子がいなくなれば良いのね?
優子さえ、優子さえ消えれば…
全て私のもの…っ」
小さく聞こえる呟く花恋の声。僕は手を振り払い、教室を出ていった。
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