人間姫
1.人間姫
「……というお話です、ニーナお嬢様」
「ふぅん。なんだかすっきりしないおはなしね。おひめさまがかわいそう」
「大きくなったらお姫様の気持ちがわかりますよ」
窓の外は暗く、光は月明かりのみだ。
屋敷の一室では20代半ばくらいの女性が、まだ言葉もたどたどしい小さな少女に絵本の読み聞かせを終えたところだった。
絵本の名は、「人魚姫」。
人魚姫が泡になってから数百年……。
人間は人魚なんて夢物語だと、決め付けていた。
数百年前、王子が暮らしていた王邸、それがこの屋敷だった。
この「人魚姫」に不満げな感想をこぼす少女に父にあたる者が王。
つまり、この少女……ニーナがこの国の「おひめさま」なのだ。