辻斬り
ぞろぞろと影が増える。
ひとつ、ふたつ、みっつ。

(なんなのよ、こんなの、まなみは悪霊に殺されたっていうの……)

えもいえぬほどの汗をかき身を震わせてその場でうずくまった。とにかくこれが何も気づかずに通り過ぎれば、まだ助かるはず――。そう思いつめるうちに、不穏な音のすべてがやんだ。
静寂を取り戻した中、めぐみはゆっくりと顔を上げる。顔を上げるとその目の前には、人影らしいものがあった。

——しまった!

そう思い懐中電灯を当てて怯ませようと試みた。だがそのとき不意に照らした右手の正体を見てめぐみはおののいた。
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