辻斬り
腕時計は午前3時を回った。大熊は懇願する。
「一緒に逃げてください! 僕一人じゃもう心細くて……」
「男が情けないこと言うな」
「だって、だって……」
大熊は小心者よろしく声を細らせながら身を縮ませる。
戎徒はその傍に危険な気配を感じていた。大熊の肩をつかみぎゅっと力を入れる。その力の強さに大熊は痛いと思いながらも、少し勇気を得た気がした。
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