辻斬り
「あの事故もお、ここに転がり込んだのもお、この霧もお、爺さんの頃からのお、怨念の仕業だって言うのかあ……冗談が過ぎるぜえ」
「お前一人、ここに差し出せば、すべてが収まる。おとなしく観念しろ」
戎徒は手に持った木の棒で赤田を威嚇する。
「須貝ぃぃ、この霧の中でえお前は誰のために何を果たす気だあ?」
戎徒は侮蔑の表情で赤田を見た。
「——お前なんかに、分かってたまるか」
白い霧は竜のようにうねり二人を狂気へと煽る。
「お前、村の連中への肩入れのつもりか? 何も知らないくせに……」