辻斬り
――もしもここで死ぬのなら、いやな奴らもろとも死んじゃえばいいや。もしもここで生き延びたなら、いやな奴らみんな死んでくれてたほうがいいや。
ちょっと意見しただけで舌打ちした科学教師の三内、口臭臭い研究員の大平、人間関係にいちゃもんをつけた今村……みんなお前らなんか死んでしまえって願ってる。
くすくすと笑いながらメールを「葬信」。
ざっまあみろ、と言いながら携帯を閉じた。
縁切りの場所としての辻――死を賭して、縁を切る。これで終わりだ、私も、みんなも。
パタン。
携帯をしまうのとは別に、どこかでそんな音がした。
誰かが、まるで同じことをしていたかのような。
「変ね」
そう呟くとヘンデルを両手で抱えて、辺りをくるっと見回す。
何もない。安心はしたが、何か物足りない。
(いたずらがすぎたか)
えみはスラッシュメールの話をめぐみやまなみに持ちかけた。この二人なら、存分に悪用するに違いないと思って。

< 200 / 245 >

この作品をシェア

pagetop