辻斬り
案の定、所かまわず撒き散らして学校内にいいだけ恐怖が出回った。
自分は高みの見物を決め込んでそれを実際に送ったことは今まで一度もなかった。
たった今送ったものが初めてだ。
(あはは、ついにあたし自ら動くなんてね)
ヒュッと斬りつけたような音。耳を通り過ぎる勢いあるそれに、えみは少し震えた。
「だ、だれ?」
小さく呟いた。
そのとき、えみの背後から鋭いものが現れる。
それは、霧を巻き込み異様な発光を称えていた。
続いて、ぼとっぼとっぼとっと、人のような何かが木の上から落ちる。
四つんばいで歩くそれらは人の形をしているが吐息はまるで霧のように晴れるところを知らない。
はっはっと息が吐き出されるたびに霧が増えていく、えみはそんな気がした。
脅えながらもその顔を確認した。
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