辻斬り
「本当に、鬼がいるって言うのか? それとも別の何かか? 馬鹿な――」
紀伊は苦々しく呟く。
ルージュの痕跡を頼りに廃屋へとたどり着き、惨状を見た後だった。
美保は確かに自分が殺した。
ここに来た本当の目的を果たすためだ。
あの4人のいじめが原因で死んだ妹、愛実(あいみ)の仇を取るため、めぐみら4人をここまで追い込んだ。遺書に記されていた同じ名前の女こそが妹を追い詰めた。そう信じ、大学のゼミの同級生で同じ名前の女性を集め、ひとりひとり呪いのせいにして始末してやるつもりだった。そして、赤田の事件が残した呪いとしてこの話題を小説にしたてようとも。アスベストの問題? そんなことは口実だ。
自分の都合だけで生きているやつらは、誰かの都合でみんな死んでいくんだ、面白おかしく楽しめば良い――彼の身上だ。
なのに、まるで自分が呪いに翻弄されているかのような、願うままに次々と人が死んでいくのはなぜだ?
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