辻斬り
明治・大正・昭和と時を経て、村は如何ヶ峰から取れる石綿を非合法で採掘し生計をしのいだ。流人や身よりなき子供が村の辻に置き捨てられ人足として使われた。疫病にはよく悩まされた。
秘密を守るために医者など一切寄せ付けず、病気の際には気休めに祈祷で鎮めることが多かったといわれる。
そして、どうしようもない者達は辻落しでみな始末されていった。
村長のひとり息子は村で最初の医者となる約束をして東京へ送り出された。ついに村も忌むべき慣習から逃れられると喜んだのもつかの間――
無事に医者となったはずの息子は、一向に戻ってこない。


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